研究課題
我々は難治性白血病の薬剤耐性は、multifactorialであることを明らかにしてきた。今回、耐性につき抗がん薬,白血病細胞,宿主の3者の相互関係の面から統合的に検討し、テーラーメイド治療に基づく耐性克服を目標として研究を行う。抗がん薬については、代表的アンソラサイクリン系薬剤イダルビシンにおいて、1コース目に比べ、2コース目の投与時により強い骨髄抑制がおこることに着目し、そのPK/PDにつき検討した。本薬は、宿主のcarbonyl還元酵素により13-OH体に代謝されるが、本代謝物は半減期が長く、かつ他のアンソラサイクリンと異なり強い抗腫瘍活性を有する。またratにおいて上記代謝酵素系は、本薬の前投与により、肝等において活性増強が誘導された。本薬を間欠的に投与すると初回投与時に比べ、2回目により13-OH体idarubicinolの血中濃度は上昇し、もって骨髄抑制や抗腫瘍活性の増強が期待されることを見出し、pharmacokinetic self-potentiation(薬物動態的自己増強)なる概念を提唱した。白血病細胞の要因としては、Tリンパ性白血病細胞株(CEM)において、Glutathione S-transferaseμ(GSTM1)の意義につき検討した。GSTM1は共同研究者岸らの検討により、小児ALLの予後不良因子として抽出された。GSTM1をCEMにtrasfectした細胞においては、デキサメサゾンに強い耐性を発現した。興味あることに本薬の耐性機序はグルタチオン抱合の程度やステロイドレセプター発現の程度とは相関せず、現在、そのメカニズムにつき検討をすすめている。分子標的治療薬イマチニブについても、BCR-ABL遺伝子の増幅を機序とする耐性細胞株を樹立し、この耐性が第2世代阻害薬であるSrc阻害薬CGP76030の併用や,Abl阻害薬ニロチニブ、Abl/Lyn阻害薬1NNO-406により克服可能であることを報告した。
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