研究課題
白血病細胞における糖代謝特性を検討するために、ヒト白血病細胞株UT-7/TPOを用い、Thrombopoietin(TPO)で刺激を行ったさいの解糖系酵素の発現や糖代謝に伴う活性酸素の産生の変化について検討を行った。以下の事項を明らかにした。(1)TPOはグルコースの細胞内取り込みに関わるGlucose transporter1(GLUT1)の発現を誘導した。また、これはGLUT1の合成を促進するのではなく、細胞表面への移行が上昇するためであることが分かった。(2)TPOにより、UT-7/TPO細胞での活性酸素産生が上昇した。また、GLUT1の阻害剤や解糖系の律速酵素であるHexokinaseに対する阻害剤を用いることにより、活性酸素産生は完全に抑制された。また、ミトコンドリアの電子伝達系の阻害剤を用いた場合にも同様な結果が得られた。我々はTPO刺激により転写因子HIF-1が活性化されることを報告しているが(Kirito,K.etal.Blood2005),上記のいずれの阻害剤はHIF-1の活性化を抑制していた。(3)TPO刺激後の糖代謝関連酵素の発現を追跡した結果、ピルビン酸の代謝方向の決定に関与するPyruvae dehydrogenase kinase-1(PDK1)が経時的に発現が上昇することが分かった。(4)転写因子HIF-1の機能をsiRNAで阻害するとPDK1の発現上昇はみられなくなり、また活性酸素の産生が遷延することが観察された。以上の結果より、TPOは糖代謝を亢進させ、それに伴いミトコンドリアからの活性酸素が上昇するが、これによりHIF-1が活性されPDK-1が誘導されることによって、過剰な活性酸素の産生が抑制されるというフィードバック機構が存在していることが示唆された。このフィードバック機構の生物学的な意義や、白血病治療における標的となる可能性についてさらに探求を行う。
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