研究概要 |
1)名古屋大学医学部附属病院ならびに関連施設における成人急性骨髄性白血病(AML)90例の白血病細胞のRhoH発現量をTaqManPCR法で定量した。RhoH発現はFAB分類、年齢、初診時白血球数、寛解導入率、染色体異常の有無に無関係であった。RhoH transciptsの中央値である1.57copies/μ g RNAをカットオフ値としてRhoH低発現群と高発現群に分けて予後を検討したところ、低発現群では高発現群と比較して有意に予後不良であった。また多変量解析にて、RhoH低発現は無病生存率において予後不良因子であった。 RhoHの生物学的機能の解明のため、以下の実験を施行した。 2)32D細胞、HL60細胞にRhoH cDNA, empty vectorをレトロウイルスで導入し、VLA4(α4β1インテグリン)の活性に及ぼすRhoHの影響をFACSを用いたVCAM-1アッセイで定量した。この結果、RhoH発現の有無はVLA4の活性に影響を与えなかった。 3)COS7細胞にRhoH過剰発現させた状態ではsmall GTPase Racが不活性化することが明らかになった。またRac-PAKの下流に存在するBadのS112のリン酸化を測定したところ、RhoH発現によりBad S112のリン酸化が抑制される事が明らかになった。 RhoHはLFA1(αLβ2インテグリン)活性を抑制することが既に報告されている。RhoHは骨髄系細胞での主要なインテグリンであるVLA4活性には影響を及ぼさなかったことから、細胞接着への関与は少ないものと推測された。その一方でRhoHはRac活性を抑制する事により、その下流のBadの脱リン酸化を介して細胞に対してpro-apoptoticに作用していることが示唆された。今後白血病細胞でのRhoHの機能をさらに解明していくことが望まれる。
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