研究概要 |
造血幹細胞由来の単球のランゲルハンス細胞への運命決定における組織環境の重要性について研究を進めている過程において次のようなことを見出した。(1)組織の支持細胞に発現されているNotchリガンドDelta-1によるNotchシグナルとgp130シグナルの相互作用をNotchリガンドDelta-1,IL-6,およびIL-6受容体陰性細胞においてもIL-6のシグナル伝達受容体であるgp130シグナルを活性化できるIL-6とIL-6受容体の融合蛋白(FP6)を用いて検討した。NotchリガンドDelta-1は固相化状態でNotchを強く活性化するため,NotchリガンドDelta-1の細胞外領域と2myc tagからなるコンストラクトDelta-1^<ext-myc>を作製し,culture plateの表面を抗myc抗体で被い,抗myc抗体を介して固相化した。NotchリガンドDelta-1がIL-6受容体陽性骨髄球系前駆細胞においてIL-6によるgp130シグナルを抑制し,IL-6受容体陰性赤芽球系前駆細胞においてFP6によるgp130シグナルを促進することを見いだした。これらのことから,NotchリガンドDelta-1は標的細胞により対照的にgp130シグナルを制御していることが明らかとなった。(2)造血幹細胞は経静脈的に移植されているが,将来には生着率の改善のため骨髄内移植も行われるようになると思われる。そこで,免疫不全マウスを用いてヒト造血幹細胞の骨髄内移植の実験を行ったところ,体外でサイトカインにより培養されたヒト造血幹細胞は注入した骨以外の骨髄には移行し難いことが判明した。造血幹細胞の生着,生存,分化,増殖には細胞がおかれている組織環境だけでなく,細胞側の変化にも注意を要することが示された。血液細胞の運命決定は組織環境と細胞特性の両面から検討していく必要がある。
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