研究課題/領域番号 |
19591110
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
横田 貴史 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (60403200)
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研究分担者 |
織谷 健司 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (70324762)
金倉 譲 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20177489)
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キーワード | リンパ球 / 造血幹細胞 / Wntシグナル / 妊娠 / エストロゲン |
研究概要 |
リンパ球の増殖・分化のメカニズムは、近年サイトカインからのシグナル伝達機構や転写因子の解析を通じて理解が深まっている。しかしその最も初期の段階、すなわち造血幹細胞からリンパ球系への初期分化の制御機構については完全な解明には至っていない。私達は妊娠期のリンパ球造血が著明に低下すること、さらにその変容に性ホルモンestrogenが大きく関わっていることを明らかにしたが、詳細な分子メカニズムは不明であった。本研究ではRag1/GFP knock-in mouseを用いて、妊娠およびestrogenがリンパ球初期分化のどの段階を抑制するか解析し、さらに間質細胞におけるestrogen誘導遺伝子からリンパ球初期分化に関与する分子の同定を試みた。 結果として(1)妊娠期およびestrogen投与後のマウスの骨髄では、造血幹細胞分画(Lineage-Sca1^+ckit^<Hi>;LSK分画)に存在するRag1^+早期リンパ球前駆細胞が著明に減少することがわかった。(2)間質細胞におけるestrogen誘導発現遺伝子としてWntの細胞外調節分子secreted Frizzled-related protein 1(sFRP1)を同定した。(3)SFRP1の発現誘導にはestrogen receptor-αが重要であった。(4)正常骨髄の免疫染色にて、骨組織表面に存在する間質細胞や血管内皮細胞にsFRP1の発現を認めた。妊娠期およびestrogen投与後のマウスの骨髄ではその発現が上昇した。(5)培養実験にてSFRP1は、造血幹細胞を含む分画からのBリンパ球産生を濃度依存性に抑制した。SFRP1は外来性のWnt非存在下でLSK細胞のβ-catenin系を活性化した。 以上をまとめると、妊娠およびestrogenによって、造血幹細胞に極めて近位のリンパ球分化が抑制されることが確認された。また間質細胞におけるestrogen誘導遺伝子として同定されたsFRP1は、Wntシグナルへの直接的な関与を介して早期のリンパ球分化を制御する可能性が示唆された。
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