oligonucleotide arrayを用いたRNA量とDNA量の網羅的解析により、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の発症/進展に関連しうる細胞遺伝子群を抽出するために、以下の検体のデータを用いた。すなわち、3例のhuman T-lymphotropic virus type-I(HTLV-1)非感染健常人の6検体(PHA刺激あり/なし)、19例の慢性型ATLLと22例の急性型ATLLについてのoligonucleotide arrayによる約30000の遺伝子発現データと、9例の慢性型ATLと15例の急性型ATLについてのSNP genotyping arrayによる約100Kbレベルのaneuploidyデータを、それぞれ純化したCD4陽性細胞を用いて既に得たものである。 その中から、健常人と比べて慢性型ATLで高発現であり、さらに急性型ATLでは高まっている遺伝子に着目し、現在はいくつかのポリコームグループ(PcG)分子について解析を進めている。PcGはエピジェネティックな遺伝子発現調節機構に関与する分子群であり、polycomb repressive complexと呼ばれる複合体を構成し、遺伝子発現を制御することで発生、分化、幹細胞の維持、そして癌化などに関与することが報告されている。PcGによる転写制御には、DNAやヒストンのメチル化に加え、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の関与も報告されているのでマイクロアレイのデータベースを用いてHDACの発現についても検討したところ、HDAC1とHDAC2は、慢性型と比較して急性型ATLで発現の充進を認めており、本疾患の病態へのHDACの関与も示唆されたので、HDAC阻害剤のATLに対する新規治療法としての開発応用も検討している。
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