研究概要 |
これ迄、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の細胞内小器官(ゴルジ体あるいは小胞体)への局在化という現象が、異なる2つの病態(白血病とHIV-1感染)で共通するという意外な事実が明らかとなってきた。しかし、局在化する場、局在化の動態、誘導のメカニズムや活性化されるシグナル経路などでは必ず違いがある筈であり、それが各々の病態形成に反映される事が十分に予想される。この点において、HIV-1NefによるM-CSF受容体Fmsのゴルジ体局在化は、恒常的活性化変異Flt3(FL受容体)のゴルジ体/小胞体局在化と白血病発症の関連を解明するための有用な比較対照になると期待される。本研究は、この新たな比較解析を詳細に行う事で、Flt3変異が白血病化を誘導する機構の解明に貢献しようとするものである。 これまでに、HIV-1NefによるFmsのゴルジ体局在化は、Hckの活性化に完全に依存し、且つ、活性化Hckのゴルジ体への蓄積の程度に良く相関する事を見出した(Hiyoshi et al. Blood111,243-250,2008)。更に、ゴルジ体に局在化したFmsはリガンドM-CSF非依存的に活性化する事、およびこれらがゴルジ体の構造異常を伴う事も見出した(投稿準備中)。一方、Flt3-ITDやv-Fmsといった活性化変異型RTKはHIV-1Nef/Hckの場合とは異なり、主に小胞体に局在化しており、にもかかわらずTF-1等の血液系の細胞を腫瘍化する事も見出した(投稿準備中)。以上の結果より、細胞内小器官でのシグナル経路活性化と疾患の関連性がより明確になってきた。
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