研究概要 |
特発性再生不良性貧血(AA)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)および骨髄異形成症候群-不応性貧血(MDS-RA)などの骨髄不全症候群(BFS)に共通した造血障害機序として、NKG2D介在性自己免疫による造血細胞傷害を想定し、その実証を進めている。19年度は、AA47例、PNH19例、MDS-RA22例の計88例を対象としたNKG2Dリガンド(ULBPs,MICA/B)の血球膜発現解析を実施しAA60%、PNH58%、MDS-RA36%、全体で53%の患者で発現を認めた。これは健常人の6%に比べ有意に高値であり、患者ではNKG2D発現を誘導する何らかのストレスの存在が示唆された。さらに、一部の解析可能な患者(AA5例、PNH3例、MDS-RA3例)では、CD34陽性骨髄細胞におけるNKG2Dリガンド発現が確認できたため、20年度は、このようなNKG2Dリガンド発現骨髄細胞が、NKG2Dレセプター発現の自己リンパ球により造血障害を受けるかどうか、抗NKG2D抗体を用いたコロニー形成回復実験により検証を試みた。まず、患者骨髄単核球(造血前駆細胞+NKG2D陽性リンパ球)を調整し、抗NKG2D抗体あるいはコントロールlgG1で前処置後に、MethoCult[○!R]を用いたコロニー形成能を調べた。その結果、NKG2Dリガンド発現骨髄細胞のみコロニー形成能の有意な回復を認め、患者骨髄におけるNKG2D介在性の造血障害機序が強く示唆された。
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