(1)T細胞性悪性リンパ腫(T-ML)に対する同種造血幹細胞移植(allo-BMT)の適応は、現在でも実験的医療の域を出ていない。T-MLにallo-BMTが有効であるには、免疫応答を介した移植片対リンパ腫効果(GvML)の存在が必要である。T-MLのモデルとして成入T細胞白血病リンパ腫(ATLL)を、特に治療抵抗性ATLLに対して適時的な移植ドナー確保とともにHLA不適合によるGvML効果を期待して、HLA不適合家族ドナー、特に成人した子かち親(患者)への移植の臨床パイロットスタディー結果を報告した。この中で、治療抵抗性のATLLでもHLA不適合を介在した同種免疫を主体にGvML劾果が働くことを示した。 (2)移植後再発時の患者免疫機能に関して、様々を機序で抗腫瘍性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)機能が抑制されていることを示した。その一つとして、Programmed death-1 (PD-1)とそのリガンドPD-L1を介した系が、HTLV-I感染キャリアからATL患者において、HTLV-I感染細胞に対して殺細胞性に働き、HTLV-I感染細胞数を制御していると考えられるHTLV-I Tax蛋白特異的CTLの細胞傷害活性を抑制していることを示した。他の腫瘍免疫抑制機序の一つとして、HTLV-Iキャリアから同種移植を受けて、移植後早期再発したATL患者を詳細に検計し、移植後再発時ATL細胞がHTLV-Iのゲノム-integration部位をLAM-PCRで見ると初発と同一クローンであり、再発前後でPD-L1の消失とFoxp3発現の獲得をepigeneticに起こしている症例があることを示した。 (3)新規腫瘍関連抗原の検索では、ATL症例の約30から40%に過剰発現が見られると報告されているAurora A kinaseのHLA-A*0201拘束性にCTL機能を発揮する抗原epitopeを同定し、悪性リンパ腫や白血病など造血器悪性腫瘍に広汎に過剰発現していることを示し、まず、特に過剰発現レベルの高い骨髄性白血病から、臨床的有用性を示すデータを集積し発表した。他、造血器悪性腫瘍に対する免疫療法に利用できる可能性のある腫瘍関連抗原としてCML66由来の抗原ペプチドを同定し発表した。
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