生体防御の最前線を担う好中球は寿命が24〜48時間と短いためにその産生調節は非常に重要である。申請者は好中球の造血制御においてC/EBPβ遺伝子の働きが重要であることを明らかにしており、本研究ではC/EBPβ遺伝子の発現調節機構と分化・増殖における機能を解明することを計画した。まずマウス骨髄細胞の試験管内分化系もしくは骨髄移植モデルと組み合わせて遺伝子の発現調節機構をモニタリングするためにレトロウイルスベクターを用いたプロモーター活性の評価系を新規に開発した。これにより単離したC/EBPβのプロモーター領域の活性に必要な領域の解析を進めている。このプロモーター活性の評価系は造血系における遺伝子発現の転写調節機構に幅広く応用可能である。また骨髄において好中球は造血幹細胞、骨髄球系共通前駆細胞、顆粒球マクロファージ前駆細胞の分化段階を経て分化成熟する。これまでの研究の成果によりマウス骨髄中のそれらの各細胞集団は蛍光抗体による多重染色を用いたフローサイトメーターにより分離同定が可能となっている。しかし顆粒球マクロファージ前駆細胞からさらに最終的に成熟した好中球へ分化する中間段階の細胞集団についての分離法については開発されていない。本研究ではC/EBPβの作用点を明らかにするためにこのような骨髄中の好中球分化の中間段階の細胞をフローサイトメーターで分離するシステムを開発した。各中間段階が正しく分離できているかどうかを確認するために好中球の一次顆粒(エステラーゼ、カテプシン)、二次顆粒(ラクトフェリン)、三次顆粒(MMP9)を構成する遺伝子の発現レベルを定量した。C/EBPβの欠損による緊急時の好中球造血の抑制が分化のどの段階で起こっているかを明らかにするためにC/EBPβのノックアウトマウスの供与を受け研究遂行に必要な個体を繁殖中である。
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