研究概要 |
多発性骨髄腫では,約60%の症例で免疫グロブリンH鎖遺伝子(IGH)の染色体再構成により,腫瘍化に関与する遺伝子が活性化される.IGH転座の相手遺伝子には,FGFR3/MMSET,MUMI(IRF4),MAF,MAFB,CCND1,CCND3などがある.しかし,多発性骨髄腫の腫瘍化と増悪進展の分子機構はきわめて複雑であり,多数の遺伝子異常が蓄積している.今回の研究では,Affymetrix社の高密度オリゴヌクレオチドアレイ(50K)と多色蛍光染色体解析法で多発性骨髄腫細胞株11株とB細胞リンパ腫細胞株9株を解析し,ゲノム異常の集中する領域について遺伝子発現を検討した.いずれにも共通する18q領域のgainに注目し解析した結果,B細胞リンパ腫株と多発性骨髄腫株に共通するゲノム異常を18q21.1-q21.3のgainとして同定した.この領域に存在するSMAD4,DCC,STARD6,TCF4,TXNLI,WDR7,FECH,NARS,MALTI,BCL2の発現をRT-PCRで解析した,その結果,DCCの発現に差が認められ,B細胞リンパ腫株では発現が消失するか非常に減弱していた.一方,多発性骨髄腫では殆どに発現が認められたが,3株でexonlを欠いた発現産物を検出した.Exonlにかわって結合する未知の配列の可能性について,Bubble PCRで検討中である.
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