研究課題
同種造血幹細胞移植には、移植片対宿主病や感染症以外にも多くの合併症がある。中でも心臓の合併症は、早期死亡や晩期死亡の原因にもなる。我々は移植前心機能低下を認めた患者において、移植後心機能および自律神経機能を包括的に評価し、心機能低下が移植後改善するかを観察した。移植前および移植後100日目までの問、心電図、心エコー、心プールシンチ、血清マーカーおよび心拍変動の変化を評価し解析したところ、全ての患者で有意な心機能の改善を認めなかった。しかしながら、心拍変動の時間領域解析において、SDNNおよびCVRRが移植後30-60日目で有意な低下を認めた(P=0.04、0.01)。同様に、心拍変動の周波数領域解析においても、LFおよびHFにおいて有意な一時的低下を認めた(P=0.003、0.03)。移植後急性心不全を発症した患者において移植後30-60日目でのSDNN、CVRR、rMSSD、LFおよびHFは他の患者と比べ最も低値であった。本研究より、a)RISTは心機能低下患者に対しても十分許容できるが、ヘモクロマトーシス以外の原因での心機能低下の改善は期待できないと思われ、b)心拍変動測定はRIST後心イベントの予測に役立つ可能性が示唆された。同種造血幹細胞移植にはドナーが不可欠であるが、同種末梢血幹細胞採取にはごく稀に致命的な合併症が報告されている。本研究では、末梢血幹細胞採取時に、交感神経と迷走神経のバランスと自律神経の心血管制御を反映する心拍変動を解析し、SDNN、r-MSSD、TF、HF、LFすべての指標が有意に低下する事を見いだした。特に、TFとLFは症候性低血圧を起こしたドナーでは、有さないドナーに比し有意に低下していた。以上から、心拍変動解析は、末梢血幹細胞採取時の有害事象を予測しうる指標となる可能性が示唆された。
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