我々は効率の良いゲノミクス解析を行うことを目的として、AML症例を含む様々な白血病類縁疾患の患者骨髄より造血幹細胞相当分画のみを純化保存する大規模検体収集事業「Blast Bank」を設立した。平成21年3月時点で700症例を超える検体収集に成功しており、本バンクは純化ヒト疾患臨床検体のゲノミクスプロジェクトとして世界最大規模の一つとなっている。当該年度においては、本バンクに属するAML症例について染色体構造異常部位のデータベース構築の完成を目指した。具体的にはアフィメトリクス社のマッピング100Kアレイにビオチン標識されたゲノムDNA断片をハイブリダイズし、25kbpの平均解像度を以て全ゲノムに渡る詳細な染色体コピー数を測定した。我々は本アレイを使用しAML75症例の染色体コピー数変化(copy number alteration:CNA)やloss-of-heterozygosity(LOH)解析を行った結果、正常核型と診断されていたAML症例の多くに数百kbpから染色体全体にわたる構造異常を認め、またAML全体で遺伝子発現量に相関するCNA部位や、多症例に共通した1.OH部位を複数同定した。更にAML症例におけるDNAメチル化レベルデータベースの構築を試みた。具体的にはMCA-RDA法により健常者骨髄造血幹細胞DNAとAML症例白血病芽球DNAとの問で程度の頃なるメチル化断片を選択的に増幅した後マッピング100Kアレイにハイブリダイズすることで、ゲノム上におけるDNAメチル化レベルと部位のアノテーションを決定した。その結果疾患特異的なDNAメチル化レベル異常部位を複数同定した。これらの異常部位に存在する遺伝子はAML発症原因遺伝子の候補と言える。更に治療反応性や生命予後など臨床パラメーターにリンクした染色体構造異常部位やDNAメチル化レベル異常部位の同定も試みた。
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