骨格筋・肝臓・脂肪組織のそれぞれを標的としたベクター構築を行い、効果及び免疫反応を比較検討した。その結果、骨格筋に対しては1型のベクターにCMVプロモーターを用いた場合が最も良く、肝臓に対しては8型のベクターにhAATプロモーターを用いるのが最も有効であった。脂肪組織における発現レベルは骨格筋・肝臓に匹敵するには至っておらず、実用化に向けてはより一層の取り組みが必要と考えられた。なお、C57BL/6マウスでは、標的組織による免疫応答の違いは明らかでなかった。また、免疫反応に関しては、in vivoの投与では投与前の中和抗体に関する検討が重要と考えられることから、検出系の感度を向上させるための取り組みを行っている。これまでのところ、検出方法・反応方法などに関する条件を最適化することで、検出感度を大幅に改善させることができた。しかしながら8型、9型などでは未だ充分とはいえないレベルであり、一層の改善が望まれる状況である。これは主に効率よく感染する細胞が見つかっていないことに由来することから、このような細胞株の探索をはじめとする様々な取り組みを行っている。検出感度の改善が一段落したところで、サル及びヒト血清における中和抗体陽性率の測定を行い、AAVベクターの有用性に関する検討を進める予定である。また、AAVのレセプター分子に関する遺伝子改変マウスに関しては、5型のレセプターとして知られるPDGFレセプターに関して、当該分子のトランスジェニックマウスを開発した徳島大学グループとの間で共同研究を行った。その結果、トランスジェニックマウスにおける感染効率の向上は明らかではなく、骨格筋にベクターを投与した際には感染経路のうちレセプター以降のステップが律速段階になっていることが示唆された。
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