研究概要 |
ユビキチン-プロテオゾームシステムは細胞周期制御やアポトーシス、シグナル伝達、DNA修復などの様々な生理現象をたんぱく分解を通じて制御している。Fbxw7はSCF型のユビキチンリガーゼのコンポーネントで、Myc,cyclin E,Notch,c-Junなど細胞周期を正に回転させる分子のユビキチン化を制御している。Notchやc-Mycは、造血幹細胞の維持機構に重要な役割を果たしていることが以前より知られていることから、我々はFbxw7が造血幹細胞の細胞周期制御と造血の維持に何らかの働きをしているのではないかという仮説を立てた。そこで本研究では、血液細胞特異的にFbxw7を欠失するコンディショナルノックアウトマウスを作製し、主に造血幹細胞におけるFbxw7の役割について解析した。血液細胞特異的にFbxw7を欠失したマウスでは、細胞周期の過剰な促進とp53依存性のアポトーシスの亢進による造血幹細胞の減少が認められた。興味深いことに、Fbxw7の欠失は、経時的にp53の機能抑制を生じ、T-cell acute lymphoblastic leukemia(T-ALL)を発症させた。Fbxw7は、造血幹細胞の減少と白血病発症をともに抑制する分子として機能していることが明らかになった。我々はさらにヒトT-ALL患者症例の解析で、Fbxw7の変異を持つ症例があることを確認し、マウス同様ヒトでもFbxw7の機能低下がT-ALLの発症に関わっていることが示唆された。
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