研究概要 |
白血病細胞の生存、増殖に種々の液性因子,例えばサイトカインなどの関与が報告されている。しかしながら今までに報告のある因子による影響だけでは白血病細胞の活性化、異常増殖を完全に説明することはできない。申請者らは神経栄養因子の一つである,BDNFを白血病細胞株が恒常的に産生していることを見出した。本年度ではBDNFの免疫細胞に対する影響を中心に解析することを目的とした。 1.白血病細胞株を用いた細胞増殖反応の検討白血病細胞株(MT-2,HUTIO2,Jurkat細胞株など)の培養液中にBDNF或いは抗BDNF抗体を作用させ,その増殖への影響を時間経過と共にAlamarBlueの呈色により評価した。抗BDNF抗体による顕著な細胞増殖阻害は認められなかった。これは抗体が中和抗体としての親和性が低かった要因も考えられるため,更なる検討が必要であると考えられた。 2.BDNFの免疫細胞への影響の検討白血病細胞株から産生されたBDNFが正常免疫細胞に及ぼす影響をチオグリコレートで誘導した腹腔マクロファージを用いて解析した。まずこれら腹腔マクロファージがBDNFのレセプターであるTrkBを発現していることをウエスタンブロットにより確認した。マクロファージは抗腫瘍サイトカインを産生し(TNF-αやIL-12),抗腫瘍作用を発揮する免疫細胞である。腹腔マクロファージをBDNFで前処理するとLPSにより誘導されるTNF-α,IL-12の産生が有意に減少した。更にBDNFで前処理した腹腔マクロファージはA20細胞株に対する細胞障害活性能も低下していた。 これらのことから白血病細胞株から産生されたBDNFがマクロファージに作用し抗腫瘍活性能を低下させることで,白血病細胞の増殖を促進している可能性が示唆された。
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