ヒト白血病のモデルを創出するために、ヒト臍帯血由来造血幹細胞に白血病原因遺伝子の1つであるTEL-AML1をレンチウイルスベクターにより発現させ、免疫不全マウスに移植して解析るシステムを確立し昨年度報告した。TEL-AML1発現により特殊な細胞表面形質を有するプロB細胞が出現し、自己複制能を発揮して白血病化に寄与することがあきらかとなった。 今年度は、もう1つの目的である造血細胞の体外増幅に主に取り組んだ。まず、マウスの未分化造血細胞にある転写因子の特定のアイソフォームを発現させることにより骨髄移植後の生着能・造血能が大幅に亢進することを見出していたが、その機序が造血幹細胞の増幅にあることを見出した。この幹細胞の増幅マウス体内においても体外においても認められた。次にこの事実を利用して造血細胞の体外増幅のための条件を詳細に検討した。その結果、遺伝子発現後7日間サイトカイン存在下に体外で培養することによって約20倍に増幅することが可能であった。 さらに、この細胞は体外で培養を継続すると1週間で2倍に増え、かつ多分化能を保持していることが判明した。すなはち、この細胞は培養条件を変えることにより、顆粒球・赤芽球・巨核球・Tリンパ球・Bリンパ球に分化させることが可能であった。この事実を応用すれば、血液成分の細胞を体外で大量に産生することが可能となるものと考え、現在より適切な条件を探索している。
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