研究概要 |
1)我々が世界に先駆けて報告し、本研究ならびにこれまでの一連の研究においてフォーカスしてきたCas-L/NEDD9(以下Cas-L)と、SH2/SH3アダプター分子であるNckが、チロシンリン酸化依存性に結合すること、また、その結合が、シグナル伝達、接着、物質の細胞内輸送等の細胞機能に重要な役割を果たしている細胞膜糖脂質豊富ミクロドメイン即ち、lipid raftにおいて起こることを見いだした。また、Cas-L RNAi或いはdominant negative型NckのH9 T細胞への導入により、サイトカイン産生・細胞遊走能が阻害されることを明らかにした。Cas-Lノックアウトマウス由来の脾T細胞を用いた解析により、ノックアウトマウス由来のT細胞において、CD3/CD28による共刺激或いは、ケモカインSDF-1によるNckのlipid raftへの移行が著しく低下していることを見出した。これまでにCas-LノックアウトマウスはSPF(specific pathogen free)conditionにおいては通常の比率で出生するが、インテグリンのリガンドに対する接着性の低下、ケモカインに対する細胞遊走能の低下がT,B両細胞において報告されているが、今回の知見はその機構の一端を示したのものと考えている。 2)また我々は、チロシンホスファターゼSHP-2とCas-LSDの結合、SHP-2 RNAiの導入による細胞遊走能の阻害を明らかにした。293T細胞に共発現させたCas-LとSHP-2が細胞辺縁部のleading edgeに共局在することを見出している。さらに、SHP-2 RNAiの導入によりERKの活性化低下が確認された。サイトカイン産生能・細胞遊走能が亢進しているCas-L導入T細胞株において、MAPK経路のうち、ERK,p38の活性化は不変だが、JNKの恒常的活性化が起きている事を見出した。 3)我々はまた、Cas-LとTGF-βシグナル系との関連について解析し、Yeast two-hybrid法により、抑制性SmadであるSmad6,7との相互作用を報告し(Inamoto S, et. al. Oncogene 2007 26:893)、TGF-β経路に作用するユビキチンE3 ligaseであるSmurf1,2がCas-Lに結合することによりユビキチン化されることを見出した。
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