研究概要 |
関節リウマチの滑膜炎に重要な分子の発現を滑膜細胞特異的に制御するmicroRNA (miRNA)を検索し、病態への関与、治療への応用を検討した。 (1)RA滑膜細胞特異的miRNAの検索とRAの病態形成におけるmiRNAの役割の解析 RA滑膜細胞(RASF)をTNFαもしくはIL-1βにて刺激し、8時間後にtotalRNAを抽出、miRNAアレイ(mirVanamiRNA Bioarrays V2, Applied Biosystem)にて発現変化を比較した。その結果、TNFαにて5個、IL-1βにて2個のmiRNAの発現が上昇した。現在その再現性とmiRNA inhibitorによる機能解析中である。 (2)細胞周期制御療法におけるmiRNAの解析 RASFにアデノウイルスにて細胞周期制御分子サイクリン依存性キナーゼインヒビター(CDKI)p21^<Cipl>アデノウイルスもしくはコントロールウイルスを感染させ、4日後にRNAを回収、(1)と同様に解析した。発現が2倍以上変化したmiRNAの中にlet-7を認め、TaqMan PCRにて確認した。Let-7は癌細胞の増殖、悪性度に相関している事が知られている。さらに、miRNAの標的mRNAを推測するTarget Scan (Sanger Institute)から、let-7の標的の中に転写抑制因子であるId-1があることを認めた。Id-1はCDKIp16^<INK4a>の転写抑制因子である事、以前RASFにp21^<Cipl>を強制発現させるとId-1の発現低下、p16^<INK4a>の発現上昇を特異的に認めたため、let-7がCDKI同士の相互関係に関与していることが推測された。そこで、miRNA inhibitor (Applied Biosystem)をRASFに導入すると、老化したRASFの内在性p16^<INK4a>の発現がmRNA,蛋白レベルの双方において抑制された。さらにこの際、Id-1の蛋白発現が上昇した。この現象は上皮系悪性腫瘍の細胞株であるHela細胞においては認めなかった。つまりRASF細胞老化のプロセスにおいてlet-7が関与している可能性がある。
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