研究概要 |
侵入門戸の異なるウイルスベクターを用いて病態発現部位(気道ならびに腸管粘膜)の粘膜特異的にサイトカインを発現させ,その病態部位の免疫是正により疾患の予防、治療を行うことを目的として以下の研究を行った。 (1)喘息の予防、治療用のツールとしてマウスIL-4アンタゴニストを挿入した非自己増殖型パラインフルエンザ2型ウイルス(PIV2△M/mIL-4a)レプリコン細胞を作製し,PIV2-M蛋白をトランスに供給することで,2x106(TCID50/ml)程度の非増殖型のウイルス回収に成功した。現在,PIV2-M蛋白を高度に誘導発現するパッケージング細胞のスクリーニングを行っている。並行して行った増殖性をもつPIV2/mIL-4を経気道的に投与し,OVA誘発喘息モデルマウスでの気道粘膜特異的Th2移行抑制による予防、治療効果の解析において,このPIV2/mIL-4を投与したマウスでは,肺胞洗浄液中の全細胞数,全蛋白量の減少ならびにTh2優位の疾患の指導を示すサイトカインの産生抑制,さらに肺組織においてもリンパ球の浸潤が抑えられており,喘息症状の改善傾向が認められた。現在,PIV2△M/mIL-4aを用いてさらに詳細に検討している。 (2)6週齢のC57BL6マウスに3%DSSを給水中に混ぜて経口投与しinflammatory bowel disease(IBD)を誘発させた。このIBDマウスにmIL-4a発現プラスミドDNAを封入したE型肝炎ウイルス様中空粒子(HEV-VLP/mIL-4a)を経口投与し,mIL-4aの腸管粘膜特異的発現を行いTh2移行抑制によるIBDの予防、治療効果を解析した。コントロール群では,DSS投与後10〜12日で血便,体重減少ならびに大腸の萎縮を伴い全て死亡したが,HEV-VLP/mIL-4aを投与したマウスでは,3%DSSの継続投与にもかかわらず,投与開始から24日後も100%の生存率を示した。現在,サイトカインならびにケモカインプロファイル等の免疫学の解析を進めている。 これらの結果により,病態発現部位の局所的粘膜免疫是正による遺伝子免疫法の有用性が示唆された。
|