研究概要 |
気管支喘息モデルマウスのオバルブミン感作前に、刺激型抗TLR4抗体であるUT12を投与した群では喘息の発症が抑制される。このマウスの肺組織のRT-PCRにおいて、UT12を投与した群ではIL-4, IL-13のみならず、IL-17Aの発現も抑制されていた上、IFN-γの発現も増強されていなかった。また、OVA感作後のマウスより脾細胞を取り出して、in vitroでOVA存在下に培養すると、UT12投与群でIL-4,IL-13,IL-17A,IFN-γのmRNA発現が抑制されており、また、IgG1およびIgEへのクラススイッチが抑制されていた。これらのことより、UT12がThバランスをTh1もしくはTh17に傾けてTh2への分化を抑制しているというよりは、UT12によりナイーブT細胞の応答全般が抑制され、Th分化が阻害されていることが考えられた。 平成19年度の報告で、UT12がB細胞に作用して抗原感作抑制を実現している可能性を述べたが、それを裏付けるデータは得られなかった。 一方、蛍光標識オバルブミンとalumの混合物をマウスの腹腔内に投与して、脾臓の樹状細胞のオバルブミン取り込みを観察したところ、UT12で前処理をしたマウスでは、オバルブミンの取り込みが抑制されることが判明した。また、UT12による抗原感作抑制は、制御性T細胞の誘導や、CD4陽性T細胞のアナジーによるものではないことを明らかにした。 これはTLR4刺激が樹状細胞の抗原取り込みを抑制することで気管支喘息の発症を抑制していることを示した初めての研究であり、気管支喘息の予防的治療につながる可能性がある。
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