研究概要 |
1.抗CADM-140抗体の対応抗原の追究皮膚筋炎(DM)で見出された抗CADM-140抗体の対応抗原の追究を試みた.大腸菌C(XL1-BlueMRF)発現λZAPファージを用いて作製したHeLa細胞cDNAライブラリーを使用し,大腸菌に抗原蛋白質を発現させ,ニトロセルロース膜に転写.抗CADM-140抗体陽性血清と反応させ,陽性クローンを単離した.陽性cDNAクローンの塩基配列を決定するために,陽性クローンの得られたファージDNAからプラスミドDNAの切り出しをおこない,プラスミドDNAを精製して,塩基配列を決定した.最後に,得られた塩基配列について,ホモロジーサーチをおこなった.その結果,9つのペプチドがCADM-140抗原の対応抗原の候補としてあがった.現在,それらのペプチドとC-ADMを含む膠原病患者および健常人血清との反応性の検討および質量分析を用いた蛋白質同定で対応抗原の確定をおこなっている.2.抗CADM-140抗体の臨床的意義これまでの検討で,抗CADM-140抗体は,DMのサブタイプであるClinically amyopathic DM(C-ADM)患者血清で主に見出され,急速進行性間質性肺炎(rapidly progressive interstitial lung disease:急速進行性ILD)併発例が高頻度であったことが特徴であった.そこで,これまで経験した急速進行性LDを併発したDMの治療について検討した.全例で,パルス療法を含む大量ステロイド療法にシクロスポリン,シクロホスファミド,タクロリムスなどの免疫抑制薬の併用による強力な治療がおこなわれたが,治療法と予後の間に一定の傾向は認められなかった.しかしながら,症例ごとに検討すると,治療法にかかわらず,早期に治療を開始し,初期に炎症の進展を抑えた症例の予後が良い傾向であった.この観点から,抗CADM-140抗体は,急速進行性ILD併発の予測のみならず,治療開始時期すなわちThe window of opportunityを逃さないという点からも有用性が示唆される.
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