自己免疫疾患における抗HMGB1/2抗体の意義を解析した。種々の自己免疫疾患患者180名中57名(31.6%)で抗HMGB1/2抗体が陽性であり、陽性頻度はSLE (51%)と筋炎(36%)で高かった。今回構築したELISAでは抗HMGB1/2抗体陽性の血清57名中、抗HMGB1抗体は31名(54.4%)で陽性で、疾患別に見るとSLEでは58.3%、筋炎では50%であった。SLEでは抗HMGB1抗体陽性群で有意にSLEDAIが高く、治療によりSLEDAIの改善とともに抗HMGB1抗体価の低下がみられ、抗HMGB1抗体価とSLEの疾患活動性との関連が示唆された。また、抗HMGB1抗体陽性群では有意に血小板数が少なかった。抗HMGB1抗体のエピトープをELISAとWestern Blot法で調べたところ、SLEの抗HMGB1抗体には複数のエピトープが存在していることが明らかとなった。HMGB1分子はBox A-linker-Box B-joiner-C tailの構造を取るが、12例中8例がbox Aを認識しており、joiner領域にもエピトープの存在が示唆された。joiner領域を含む合成ペプチドJ (aa165-184)は12例中9例のSLE血清と反応したが、筋炎では7例中1例とのみ反応し、筋炎に比較してSLEでペプチドJを認識する血清を有意に多く認めた(P<0.01)。エピトープおよびペプチドJとの結合の特異性は競合試験により確認した。joiner領域中のAKGKPDというアミノ酸配列と病原微生物の蛋白の一部との相同性が認められており、感染を契機に分子相同性よりHMGB1に対する交差反応が生じ、自己免疫反応がひきおこされた可能性が示唆された。一般にSLEでは核成分に対する自己免疫応答が顕著に認められるが、今回の解析で非ピストン核蛋白の主要な成分であるHMGB蛋白質への免疫応答の一端が明らかにされ、この自己抗体がSLEの疾患活動性や病型の層別化に有用である可能性が示唆された。
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