(1)昨年度、各種膠原病患者ごとに、Cyto-ELISA法で検出した抗細胞表面抗体価のデータと臨床デーダを組み合わせだデータベースを構築した。この整理により、同じ疾患と診断されながら、かなり違う自己抗体を持っていると判断できる場合や、逆に別の疾患と診断されながら、よく似た自己抗体を持っていると判断できる場合があることがわかった。そこで今年度は、第一段階として、よく似た自己抗体を持っていると想定される患者血清を用いて、その標的抗原を同定すべく、免疫沈降、SDS-PAGEによる分離、質量分析を行った。 (2)膜タンパクを対象にしているため、免疫沈降実験においては、可溶化が欠かせないステップである。可溶化により立体構造変化が起こり自己抗体が検出できなくなることが想定されるため、新たなELISA法を確立し、可溶化条件の検討を行った。ビオチン化した細胞表面タンパクを可溶化し、ビオチン化タンパクと結合できるNeutrAvidinをELISAプレートに固相化して捕捉する系である。界面活性剤は、Triton X-100を用いた。可溶化に問題がなければ、Cyto-ELISAの結果を反映するはずであるが、多くの患者血清において不一致が見られた。つまり、多くの自己抗原が、可溶化により立体構造が変化してしまうと考えられる。今後は他の界面活性剤の選択・検討の必要性があると考えている。 (3)可溶化しても、自己抗体の反応性が失われない患者血清があり、しかも全身性エリテマトーデスと強皮症の患者が多いことがわかった。血清を用いて、免疫沈降、SDS-PAGE、質量分析を行ったところ、ヒストンH1、ビメンチンが同定された。どちらも、本来は細胞内に存在するが、最近の論文では、細胞の状態により、細胞表面でも検出されるようになるとの報告もあり、細胞の状態によって自己抗体が結合し、その結果細胞に影響がもたらされる可能性が考えられた。
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