研究概要 |
川崎病は,乳幼児期に発症する原因不明の全身性炎症性疾患である。現在の基本的治療は免疫グロブリン大量療法(IVIG)であるが治療抵抗例が存在し心後遺症を残すため,より有効な治療戦略が求められている。一方,我々は前方視的多施設共同治療研究を行い,IVIG単独よりも,IVIG/ステロイド併用投与が臨床所見の改善と心後遺症の発生抑制に有効であることを明らかにしたが,その際に同意を得て血清収集し凍結保存した。本研究では,各々の治療が病態に与える影響を検討するため,川崎病患者の血清中各種サイトカイン(IL-1β,IFN-γ,TNF-α,IL-2,IL-4,IL-6,IL-8,IL-10,IL-17,G-CSF,MCP-1,MIP-1β)濃度および細胞外基質代謝関連物質濃度,具体的には蛋白分解酵素(Matrix Metalloprotehinase(MMP)-1,2,3,9,その内因性抑制物質(TIMP)濃度を治療別,経時的に検討した。多種のサイトカイン濃度測定にはBio-Plex Assay systemを,細胞外基質代謝関連物質濃度測定にはEHSA法を用いた。結果,コントロールや回復期に比較して,急性期には,IL-6,IL-8,IL-10,IL-2,G-CSF,MCP-1,MMP-2,3の有意な上昇が認められた。治療別には,治療直後の血中濃度や推移に差異が認められる蛋白があることを見出し,IVIG単独投与と比較してステロイド併用投与が病態に与える影響が異なることが明らかとなった。平成20年度は,血清中MMP酵素活性の測定を含め基礎的な検討を更に進めることと,我々が報告したリスクスコアとの関連を解析することが課題となる。
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