本研究は昨年度の継続と発展である。2008年度のおもな研究成果を以下に示す。 (1) 血中ADMAは胎児・新生児で最も高く、小児、成人に向かうにつれて低くなった。未熟な血管系の緊張維持にADMA系が主体的に作動する可能性が示唆された。(2)肝障害を伴わない先天性肝内門脈-静脈シャントの患者では、血中ADMA、endothelin-1が高く、血中NOが低く、血中TBARSなどの酸化ストレスマーカーが高かった。シャント率は血中ADMA、ADMA/NO比と正の相関を示した。門脈-静脈シャント自体がNO-ADMA系でのADMA優位、酸化ストレス亢進をもたらすこと、肝臓がレドックス制御の重要臓器であることが示唆された。(3)先天性尿素サイクル異常(OTC、ASS、ASLの各異常)を有しアルギニン補充を受けている患者では、OTC異常では血中NOがアルギニンに正相関して高く、ASS異常では血中NOがアルギニンに負相関して低く、ASS、ASL異常では血中ADMAがシトルリンに正相関して高かった。特にASS異常ではADMA/NO比が高く、血管内皮機能不全の存在が示唆された。(4)シトリン欠損症を有しているが、見かけ上健常な患者では対照と比べて、血中NO、ADMAに差はないが、血中コレステロールが高く、酸化型LDLなどの酸化ストレスマーカーが高かった。乳児期以降のsilent phaseでも脂肪代謝障害、酸化ストレス亢進が存在することが示されたが、それが成人期の肝障害・脳神経障害の形での再発症と関連すると思われた。以上はすべて過去に報告のない知見である。
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