研究概要 |
E*心外膜前駆組織(proepicardial organ:PEO)由来の細胞から冠動脈が発生する過程で心臓神経堤細胞(cardiacneural crest cell:cNCC)や第二次心臓形成領域(second heart field:SHF)細胞が与える影響について,これらの培養細胞を用いて検討した。 (1)ニワトリ胚でのPEO細胞の培養系の確立 Hamburger-Hamiltonステージ(HH)16-17のニワトリ胚からPEOを摘出後,血清添加コラーゲンゲル上で37℃にて2週間培養し,形態変化を実態顕微鏡下に観察した。PEOの分化を確認するため,PECAM-1,lectin, flk-1, alpha-smooth muscle actinなどのマーカーを用い免疫組織学的に検討したところ,血管内皮細胞,血管平滑筋細胞への分化が明らかになった。内皮細胞は培養早期にはlectin陽性で,その後PECAM-1陽性となった。 (2)PEO細胞とcNCCの共培養 HH10-11のニワトリ胚からcNCCを含む神経管の部分を摘出し,コラーゲンゲル上にて培養した。この培地上にHH16-17のニワトリ胚から摘出したPEOを加えて培養を試みたが成長が悪く,形態変化を観察するに至らなかった。両方の培養面を密着させ,共培養の代用とすることを試みている。 (3)PEO細胞とSHF細胞の共培養 HH14のニワトリ胚からSHFを含む咽頭弓部分を摘出し,コラーゲンゲル上にて培養した。この培地上にHH16-17のニワトリ胚から摘出したPEOを加えて培養し,形態変化を実態顕微鏡下に観察した。PEO単独で培養した場合と比べ,形態的あるいは免疫組織学的に明らかな差は認めなかった。 以上の結果から,PEO細胞が冠動脈組織に分化する上で,SHFの細胞は大きな影響を及ぼさないことが明らかになったが,cNCCの作用については次年度の課題である。
|