心臓神経堤細胞(cNCC)や心外膜前駆細胞(PEO)等の心臓外由来細胞の冠動脈近位部周辺の分布をin vivoで観察し、冠動脈発生への関与を検討した。 (1) マウス胚での冠動脈開口部の細胞接着分子やマーカーの分布 胎生13日〜14日の冠動脈が大動脈に開口する発達時期にあるマウス胚の冠動脈近位部をテネイシン(TN)C、血管内皮のマーカーであるPECAM、レクチン、神経組織のマーカーであるNCAMで免疫染色したところ開口前後の大動脈及び冠動脈内皮にレクチンが発現し、それに遅れてPECAMの発現が見られた。また、PECAMの発現に先行してTNCが発現した。しかし、NCAMの発現は見られなかった。 (2) PEO細胞とcNCCの共培養 昨年度からの継続で、HH10-11のニワトリ胚から摘出したcNCCを含む神経管の部分をコラーゲンゲル上にて培養した組織と、HH16-17のニワトリ胚から摘出したPEOの培養を密着させ、共培養の代用としたが、やはり細胞の発育は悪く形態観察には至らなかった。培養の方法を再考する必要はあるが、少なくともcNCCとPEOは互いの成長に不可欠な因子であるという根拠は得られなかった。 (3) ラット胚心臓での神経系組織由来細胞の分布 (1)、(2)の結果を踏まえ、神経堤細胞由来組織のマーカーで長期に発現するHNK-1を用い、ラット胚、特に背側中胚葉と心臓での発現の三次元的位置関係がわかるよう共焦点型実態顕微鏡下で観察した。HNK-1は胎生13日の背側中胚葉から心房中隔に連続して強く発現したが、大動脈周囲での発現は認めなかった。 以上の結果から、PEOから冠動脈が発生し大動脈へ開口する過程において、cNCC等の心臓外由来細胞は大きな役割を果たしている可能性が少ない事が示唆された。
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