研究概要 |
オリゴデンドログリア(OLD)は中枢神経系においてミエリン形成を担う細胞であり、その変性・消失により脱髄が引き起こされる。OLDに発現する蛋白質の一つにリポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)があり、ミエリン形成後の成熟脳において発現が増加することがわかっているが、OLDのどの成熟段階で発現し始めるかなど、詳しい発現機構はわかっていない。昨年はマウス胎児脳から細胞を分離し、OLDを単離培養し、幼弱OLDからミエリンシートを形成する成熟OLDへ形態変化をたどる培養系を確立した。本年は培養OLDを1,2,3,4日目に採取し、RNAを抽出し、定量的RT-PCRを用いて発現RNAのプロフィールを解析した。結果、培養後期になりL-PGDS mRNAの発現が増加するという、マウス脳組織化学所見に合致する所見をえた。来年度はこれらの実験結果を念頭において、低酸素条件下でのL-PGDS発現をmRNAの定量を行って解析していく。また、L-PGDSは分泌蛋白であるが、実際にL-PGDSが細胞外に分泌されるという証拠は証明されていない。培養液中のL-PGDSの発現をWestern blottingもしくはELISAにて定量する。さらに、心筋などではL-PGDSはエストロゲン刺激により発現が誘導されるとの報告があることから、培養OLDのエストロゲン投与下でのL-PGDS発現を確認し、神経変性疾患にたいする治療戦略への可能性を検討する。
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