研究概要 |
オリゴデンドログリア(OLD)は中枢神経系においてミエリン形成を担う細胞であり、その変性・消失により脱髄が引き起こされる。OLDに発現する蛋白質の一つにリポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)があり、成熟脳において発現が増加することがわかっているが、OLDのどの成熟段階で発現が認められるかなどの、詳しい発現様式とその意義についてはわかっていない。昨年はマウス胎児脳から細胞を分離し、OLDを単離培養し、幼弱OLDからミエリンシートを形成する成熟OLDへ形態変化をたどる培養系を確立した。本年度は培養OLDを1,2,3,4日目に採取し、RNAを抽出し、定量的RT-PCRを用いて発現RNAのプロフィールを解析した結果、培養後期の段階になりL-PGDS mRNAの発現が増加するという、マウス脳組織化学所見に合致する所見をえた。さらに、本年度はこれらの予備検討の下に、低温や低酸素/虚血等のストレス条件下でのL-PGDS発現を解析した。その結果、低温処理15分でL-PGDSの蛋白発現が増加することが免疫組織学的に確認された。また、ラット新生仔を用いて、低酸素・虚血状態においたヒト新生児低酸素虚血性脳症モデルを作成し、脳内のL-PGDS発現増加を確認した。これらの結果より、低酸素などや低温によるストレスにより脳内のL-PGDS発現が増加していることが確認された。我々は遺伝性脱髄疾患モデルtwitcherにおいて、L-PGDSの発現が増加し、神経保護的に働くことを報告している。今回の検討にてストレスに応答して増加したL-PGDSも神経保護に働いている可能性が示唆された。
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