発達障害を持つ子どもではしばしば、姿勢の悪さや、書字などにおける不器用さが合併する。従って、これらの子ども達を早期から診断・支援するためには、幼児期から学童期における微細運動機能やバランス能力を正確に評価できる方法を確立する必要がある。本研究では、評価法として、1.ムーブメントABCテストを用いたスコア算定、2.グラフィックタブレットを用いた線引きテスト(専用ソフトを用いた筆圧、動作時間、直線の長さの解析)、3.三次元加速度センサーを用いたバランス課題テスト、を導入した。バランステストでは、10秒間の開眼片足立ち、5mのつま先立ち歩きを2回行い、前後、左右、上下方向への揺れ具合を体軸上に設置した加速度センサーからコンピューター上に送信して、バランス能力を算定した。 平成19年度では、1.診断機器の準備と実施方法の確立、2.教育委員会、倫理委員会での研究実施に対する承認と個人情報保護に基づいたデータ処理法の確立、3.若年成人及び正常な発達を示す5歳〜8歳までの子ども達での測定法の確立、を中心に研究を進めた。倫理委員会での承認を得たのち、20歳代の健康成人13名、5歳から8歳までの子ども10名について予備テストを実施し、個々のテストの具体的手順、再現性、年齢に伴う発達について検討した。これらの結果から、1.本評価法が再現性に優れていること、2.従来の定性的評価とは異なり、定量的評価として発達を捉えることが可能であることが明らかとなった。一方で、成人においても個人差がかなり大きいことが認められた。 平成20年度には、19年度に確立した本方法を用いて、1.正常な発達を示す子どものサンプル数を増やし男女別の標準値を確立すること、2.高機能広範性発達障害児、早期産児における協調運動機能の発達特徴を明らかにすること、を目指す予定である。本研究を通じて、発達障害児に対し、より適切な支援方法とその評価方法が開発できるものと考えている。
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