研究概要 |
幼児期から学童期における協調運動機能やバランス能力を正確に評価できる方法を確立するために、1.ムーブメントABC(M-ABC)テストを用いたスコア算定、2.三軸加速度センサーを用いたバランス課題テストを導入し、年齢別、男女別に比較検討した。平衡試験では、10秒間の開眼片足立ち、5mのつま先立ち歩きを2回行い、前後、左右、上下方向への揺れ具合を体軸上に設置した加速度センサーからコンピューター上に送信して、動揺幅を算定した。A市の幼稚園及び小学校に通う健常児96名(5歳〜8歳男児45名、女児39名)を対象に測定を行ったところ、三軸加速度計を用いた定量的な測定結果はM-ABCのスコアと有意に相関した。また、動揺幅は男女とも加齢に伴なって小さくなったが、幼児期では女子の動揺が有意に少なく、性別により発達が異なることが明らかとなった。男女における動揺の違いは、学童期になると次第に縮小・消失した。今回の一連の研究から、本検査を用いることにより、非侵襲的に幼児・学童期の平衡機能が定量的に測定できることが確認でき、5歳〜8歳までの男女別の標準値を得るとともに定量的な平衡機能評価法をほぼ確立できた。現在、同年齢の発達障害児についての測定を継続しており、健常児との差異を明らかにできると考えている。これらの結果を知ることにより、今後、より効果的な支援プログラムの作成が期待できる。さらに、小児の動的、静的バランス評価法としても小児神経学的領域に広く応用が可能と考えられた。一方、上肢微細運動機能の測定については、筆圧,描画速度の算定には、私達が試みたよりも一層精密な曲面圧センサーが必要であることが分かり、工学研究科の研究者と協力して改良を試みている。
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