研究概要 |
【はじめに】β細胞の再生に関する最近の報告によると,β細胞の容量と年齢や体重の増加とはある一定の関係が存在し,耐糖能の変化や細胞死に対してもβ細胞の容量は増加するといわれている。この結果は,小児期に移植され膵島細胞の再生が起きれば長期生着も期待できることを示唆している。今回,小児膵島移植の実現を念頭においた基礎的実験として,小児に対する膵島移植の動物実験モデルを作製し,小児の成長を加味した移植条件の設定を試みた。 【方法】2,4,6週齢B6マウスの膵島を用い,成長過程における膵島細胞の状態,容量について観察を行った。ストレプトゾトシンで糖尿病を誘発したWTラットへの同系膵島移植を行い,成長期の至適投与数を決定し,成長に伴う血糖変動,再移植の有無,成長期間と体重増加の関連について検討した。 【結果】B6マウスから摘出した膵臓を全割して作製した組織標本を用い膵島細胞数を測定したところ,膵島細胞の数および大きさは週齢に従い増加が見られた。3週齢WTラットに500個移植すると,移植後3週で血糖の再上昇が認められたが,1000個では正常血糖が維持された。再上昇の1週間後に500個の膵島を再移植したが血糖の正常化は認めなかった。 【考察】諸家の報告と同様に,個体の成長とともに膵島細胞の容量は増加していることが確認された。小児膵島移植では成人より少ない膵島量で足りるが,十分な初期量を移植すれば,成人期においても血糖コントロールが可能であることから,移植された膵島が再生されていることが期待された。小児に対する膵島移植が積極的には行われていない理由の一つとして,免疫抑制剤による成長障害を危惧していることがあげられ、その打開が小児膵島移植への鍵となっており,膵島移植全体の成績向上へつながると考えられる。
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