【はじめに】膵島は単一な細胞に分散させ培養すると数日で細胞が癒合し始め、約1週間で100μmの膵島が再構築される。骨髄細胞を混合するとこの再構築膵島に取り込まれ、内分泌細胞に特異的な抗体によって染色されることを明らかにしている。骨髄中の膵島幹細胞を同定し、さらに増殖させ、再構築膵島を作成し、小児膵島移植の臨床応用へ展開を図ることを目的とした。 【方法】骨髄細胞と膵島細胞の混合培養条件を変化させ設定する。再構築膵島に取り込まれた骨髄細胞がインスリンを発現しているかどうか確認する。混合培養した時の骨髄の分化について、マウスの腎被膜下に移植を行い免疫染色で確認する。混合培養時に添加する増殖因子の量について検索し、条件を変化させ設定する。 【結果】再構築膵島に取り込まれた骨髄細胞についてインスリン染色を行ったが、染色されなかった。内皮細胞の前駆細胞に見られるFactor8については移植後30日後に陽性細胞が確認された。繊維が細胞の前駆細胞に見られるFSP1と、膵内分泌細胞の前駆細胞に見られるPDX1はいずれも確認されなかった。各増殖因子(nicotinamide、EGF、VEGF)について膵島の培養実験で使用されている量は0-15mM、10-100ng/ml、100ng/mlであった。 【考察】増殖因子のない条件での膵島と骨髄細胞の混合培養では、骨髄細胞からのインスリン分泌は確認されなかった。In vitroでは、培養時間の問題があり、骨髄細胞が前駆細胞さらにはインスリン分泌細胞に分化するところまで観察することができなかったと思われる。In vivoでは、移植する細胞数が少ないこと、観察する部位が限られることなど、問題点が明らかになった。
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