研究概要 |
本研究では多くの熱性けいれん患者に広く共通する疾患感受性遺伝子を同定することを目的として、日本人熱性けいれん患者を発端者とする59家族、223名(うち患児112名)を対象として解析をすすめた。本年度は以下のような結果を得ることができた。 1.5番染色体および1番染色体上の熱性けいれん遺伝子座に存在する熱性けいれん疾患感受性遺伝子の同定:本年度は主に1番染色体について解析を行った。候補領域を絞り込むため、同部位に存在するマイクロサテライトマーカーを用いてtransmission disequilibrium test(TDT解析)を行った。DIS3723とD1S1679マーカーにおいて、有意な伝達不平衡がみとめられた(P値はそれぞれ0.0055,0.016)。またJSNP databaseに登録されているSNPのうち、脳で発現しており日本人でのアレル頻度が20%以上である14個のSNPについてもTDT解析を行ったが、有意な伝達不平衡はみとめられなかった。本領域にはカリウムチャンネルとカルシウムチャンネルが多数存在しているため、それぞれの遺伝子上のマイクロサテライトマーカーやSNPを用いて連鎖解析も行った。これまでに9つのチャンネルについて解析を終了し、CACNA1E遺伝子上のマイクロサテライトマーカーにおいて、最大のNPL score2.60(P=0.0047)が得られた。 2.海外で報告されている候補遺伝子についての検討:4遺伝子(IL1B, IL1RN,GABRG2, CHRNA4)の多型について、TDT解析で熱性けいれんとの関連を検討した。いずれの遺伝子多型も熱性けいれんとの有意な関連はみとめられなかった(P値はそれぞれ0.222,1.000,0.878,0.500)。これらの4つの遺伝子については海外からも追試の報告があるが、グループ間で一定の見解が得られておらず、さらに対象数を増やして検討する必要があると考えられる。
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