研究概要 |
本研究では、志賀毒素(Stx)産生型腸管出血性大腸菌感染による溶血性尿毒性症候群に伴う急性脳症(HUS脳症)の発症機序に関するグリア細胞の役割について基礎的研究を行う。 (目的)Stx刺激による正常ヒトアストロサイト細胞でのIL-8,MCP-1などのケモカイン発現と、ケモカインが白血球付着・移行能やGb3発現能に与える影響を検討する。同細胞培養系で、抗IL-8抗体、抗MCP-1抗体の抗ケモカイン抗体を用いて、白血球付着・移行能やGb3発現能とStxの関与を検討する。阻害物質を使用してケモカインやGb3の発現抑制について検討する。またStxがケモカイン発現に関与する転写因子NF-κBに与える影響についても検討する。 (結果)準備段階で、臍帯静脈血管内皮細胞の培養系を確立し、Stxで刺激された培養液をELISA法で測定してIL-8、MCP-1などケモカインの上昇を確認した。 Stxで刺激されたヒトアストロサイト細胞で、IL-8, MCP-1, RANTESの誘導をELISAやreal-time PCRで確認し、Stxの有無での有意差を認めた。大腸菌LPSの添加でもケモカイン発現誘導を認めたが、両者を同時に添加しても、StxのみとStx+LPSの比較では有意な差は認めなかった。 real-time PCRを用いて、ケモカインの誘導を確認し、デキサメサゾンやMAPkinaseなどの阻害物質でケモカインが抑制されるかを検討中である。StxによるGb3の発現も、抗体を使用して免疫染色や蛍光染色を行うことでヒトアストロサイトでの発現を確認した。デキサメサゾンなどの阻害物質でGb3の発現が抑制されるかを検討している。またNF-κBについてもStxの刺激で誘導されるかをまずELISA法により検討中である。
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