平成20年度の研究概要;【背景】生活習慣病胎児期発症説(FOAD=fetal origin of adult disease)とは「成人のメタボリック症候群は胎児期の低栄養状態が原因となり遺伝子発現・物質代謝などの異常なセッティングを起こすことにより生じる」とする仮説である。【目的】その仮説の一つである母親の妊娠中の喫煙とその後の児の肥満・血圧の関係を横断的に検証する。【方法】対象は受動喫煙検診を受けた小学校4年生(年齢は9-10歳)1304名(男女比668:636)。受動喫煙検診は既に報告した様に喫煙に関するアンケート調査および尿中コチニン測定からなる。また同学年で実施した小児生活習慣病検診での検査項目と比較検討した。【結果】喫煙のアンケート調査から妊娠中の喫煙率は11.3%(うち妊娠3ヶ月まで52%、6ヶ月まで11%、及び妊娠中通しては37%)であった。児童の平均BHIは男子17.2、女子16.8(p〈0.001)、児の尿中コチニン(ng/ml)は0.6未満:53%、0.6〜4.9:25%、5.0〜9.9:9%、10〜24.9:10%、25〜39.9:1.9%、40以上:0.7%であった。妊娠中喫煙した母親の中で現在も喫煙している母親の割合は76%であった。BMI・体重では母親が妊娠中喫煙あり、妊娠前まで喫煙、非喫煙と分類すると、男児のみが妊娠中喫煙でBMI/体重が有意に高かった(平均BMI=18.0vs17.1、p<0.05)、血圧の比較では有意差なし。【結論】母親の妊娠中喫煙は低出生体重児の頻度が増加することが知られている。今回の検証では母親の妊娠中の喫煙は9〜10年後の男子の体重・BMIの増加をもたらす可能性があり、その点ではFOAD説を指示できる。
|