研究課題
誘導型PGE_2合成酵素mPGES-1ノックアウトマウス(mPGES-1^<-/->)と野生型マウス(WT)の海馬内にカイニン酸(KA)を微量注入するてんかん痙攣重積動物モデルを作成し、経時的な海馬内PGE_2量、直腸温の変化および48時間後の海馬CA3領域の残存神経細胞数を比較した。WTはmPGES-1^<-/->に比べ24時間後PGE_2量は約3倍であり、残存神経細胞数が有意に少ないことがわかった。直腸温には有意な差はなかった。以上の結果より、KA投与後に海馬血管内皮細胞で誘導されるmPGES-1はPGE_2産生を増やし神経細胞障害を促進することがわかったが、そのPGE_2は体温上昇を介さず局所的に作用していることもわかった。続いて、mPGES-1^<-/->とWTの海馬組織培養を用いて、KA刺激後のアストロサイト内Ca^<2+>変化とグルタミン酸放出、PGE_2産生、神経細胞障害を比較し、神軽細胞障害における血管内皮細胞mPGES-1由来PGE2こよるアストロサイトを介した制御メカニズムを明らかにした。培養液中にKAを添加し、17時間後の海馬組織培養を用いて実験を行った。WTの組織内PGE_2量はKA無添加群に比べ有意に上昇していた。Ca^<2+>はFluo-4を用いて可視化し、アストロサイトはSR101によって標識し、アストロサイト内Ca^<2+>輝度変化を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、WTに比べmPGES-1^<-/->ではアストロサイト内Ca^<2+>輝度が低く、一定時間観察内の輝度変化も軽度であることがわかった。次に、培養液中に放出されるグルタミン酸の量を比較したところ、mPGES-1^<-/->群が有意に少ないことがわかった。また、神経細胞障害のマーカーとして頻用されているpropidium iodide(PI)染色を行い、PI取り込み率を求め細胞障害の程度をmPGES-1^<-/->とWTで比較したところ、mPGES-1^<-/->群においてPI取り込み率が有意に低いことがわかった。以上の結果から、血管内皮細胞mPGES-1から合成されるPGE_2はアストロサイトからのCa^<2+>依存性グルタミン酸放出を促進し、それが神経細胞障害の増強を引き起こしていると考えられた。
すべて 2007
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Neurochem Int. 51
ページ: 112-20
Neuron 56
ページ: 456-71