研究課題
誘導型PGE_2合成酵素mPGES-1ノックアウトマウス(mPGES-1^<-/->)と野生型マウス(WT)の海馬組織培養を用いて、KA刺激後のアストロサイト内Ca^<2+>変化とグルタミン酸放出、PGE_2産生、神経細胞障害を比較し、神経細胞障害における血管内皮細胞mPGES-1由来PGE_2によるアストロサイトを介した制御メカニズムを明らかにした。培養液中にKAを添加し17時間後の海馬培養組織においてアストロサイト内Ca^<2+>輝度変化を共焦点レーザー顕微鏡で観察すると、mPGES-1^<-/->に比べWTではアストロサイト内Ca^<2+>輝度が高く、一定時間観察内の輝度変化も強いことがわかった。また、培養液中に放出されるグルタミン酸の濃度もWT群が有意に多く、また、神経細胞障害を示すpropidium iodide(PI)染色の取り込み率もWT群が有意に高いことがわかった。このWTにおけるCa^<2+>輝度上昇はCa^<2+>キレート剤(BAPTA)によって抑制され、それに伴ってグルタミン酸の量もPI取り込み率も低下した。以上の結果から、神経細胞障害はCa^<2+>依存性グルタミン酸放出によると考えられた。また、mPGES-1^<-/->の海馬培養組織にKAと共にPGE_2を添加すると、WT同様のアストロサイト内のCa^<2+>輝度上昇、培養液中グルタミン酸濃度上昇、PI取り込み率の上昇が観察された。これからも、血管内皮細胞mPGES-1から合成されるPGE_2はアストロサイトからのCa^<2+>依存性グルタミン酸放出を促進し、それが神経細胞障害の増強を引き起こしていると考えられた。また、海馬内にカイニン酸(KA)を微量注入するてんかん痙攣重積動物ラットモデルでは、コントロール群ではほとんど認められなかった、アストロサイトのendfootにおけるPGE_2のレセプターの発現誘導が認められた。endfootは血管内皮細胞を取り囲むように存在するため、血管内皮細胞で産生されたPGE_2が直接アストロサイトのendfootに作用している可能性を強く示唆した。
すべて 2008
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Brain research Journal 1
ページ: 135-164