研究概要 |
目的は、ADHD児の包括的治療法でアメリカでモデルプログラムとしてNIMH臨床研究でも使われている夏期治療プログラム(Summer Treatment Program ; STP)の効果を、脳科学的な手法を用いて明らかにすることである。くるめSTPは、米国のSTPをわが国に合うよう修正し5年間かけて完成させたものであり、エビデンスに基づく行動療法中心の治療を市内の小学校で2週間行う。STPの効果を保護者・教師への質問紙や個別の加点、減点ポイントなどの行動評価だけでなく、パソコンを用いた脳認知機能検査であるCogHealth(オーストラリアCogState社)を平成20,21年に、ストレスホルモンである唾液中のコルチゾールを平成21年に測定した。CogHealthは、detection task, identification task, memory task, working memory, monitoring taskの5つの認知機能をトランプ課題を用いて評価するものである。平成21年のSTPでも、参加全員24名にCogHealthによる脳認知機能検査を行った。平成20,21年の新規参加者21各の検討では、STP参加前後で、working memory課題の正解率、見込み反応(カードが出る前に反応する)による誤答が有意に改善した。STPが、実行機能の改善、行動抑制に効果があることがCogHealth認知機能検査によって示された。また小学校1~6年生健常児144名のCogHealthデータも平成21年に検討した結果、年齢による有意な発達変化を認めた。CogHealthは、10分間の検査であり、外来でも検査が可能であり保険収載されている。今後、ADHDのスクリーニングや行動療法、薬物療法単独、または併用療法の効果を脳科学的に客観的に評価する手段となりうるし、医療や教育現場での普及が望まれる。
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