研究概要 |
横紋筋肉腫(RMS)は小児軟部腫瘍の中で最も頻度が高く、組織学的には胎児型(embryonal type; ERMS)と胞巣型(alveolar type; ARMS)に大別される。近年の集学的治療によりERMSの治療成績は改善されてきたが、ARMSは依然として極めて予後不良である。そこで、RMSの発症や進展に関与する標的遺伝子を同定し、発症分子機構を解明すると共に疾患特異的な新たな分子標的療法の開発を目指して、計30例のRMS検体について、高密度SNPアレイを用いたゲノムコピー数の異常およびアレルの不均衡のゲノムワイドなマッピングを行った。アレイ解析の結果、複数の検体で共通して認められる欠失・増幅を起こしている領域内については、PCR-SSCP法、直接塩基配列決定法、rea1-time PCR法およびFISH法を用いて、その標的遺伝子の探索を行った。 RMSにおけるmolecular allelotypingの結果、hyperdiploidyとdiploidyのゲノム上の2つのsubgroupが存在することが特徴的だった。頻度の高いゲノムコピー数の変化は、2p、2q、13p領域の高度増幅および1p、9pのLOHであった。またこれまでに報告のない領域の異常も複数検出された。特に2q、13qの高度増幅は胞巣型RMSに特徴的であった。この領域は2;13転座の切断点の近傍に位置しており、それぞれFKHRと以PAX3がampliconに含まれることが判明したため、定量PCR法でFKHRとPAX3の発現解析を行ったところ、共に高発現が認められた。またFlSH解析も行ったところ,増幅が確認された。RMSの胞巣型で頻度の高い2q、13qの高度増幅領域の詳細な解析により、2;13転座により生じるFKHR一PAX3が染色体上で増幅していることが判明し、悪性度の高い腫瘍の性質に関与している可能性が示唆された。
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