横紋筋肉腫(RMS)の発症や進展に関与する新規がん関連遺伝子を同定し、発症分子機構を解明するとともに疾患壁異的な新たな分子標的療法の開発を目指して、計30例のRMS臨床検体と細胞株8株について、局密度SNPアレイを用いたゲノムワイドなマッピングを行った。複数の検体で共通して認められる欠失・増幅を起こしている領域内については、PCR-SSCP法、直接塩基配列決定法、real-timePCR法およびFISH法を用いて、その標的遺伝子の探索を行った。その結果、hyperdiploidyとdiploidyのゲノム上の2つのsubgroupが存在することが特徴的だった。頻度の高いゲノムコピー数の変化は、2p、2q、13p領域の高度増幅および1p、9pのLOHであった。またこれまでに報告のない領域の異常も複数検出された。臨床検体1例で2q23領域に高度増幅が検出されたが、この領域にはALK遺伝子が存在することが判明した。我々はこれまでに、神経芽腫においてALKが増幅と変異といり2つの異なるメカニズムによって造腫瘍性を来たす標的分子であることを明らかにした。このためRMSの発症分子機構におけるALKの意義を明らかにするために、この遺伝子の発現解析、変異解析を施行した。その結果、細胞株の75%、新鮮腫瘍の60%にALKの発現が確認されたが、有意な変異は検出されなかった。またSJRH-4細胞株で1p31域に約360Kbのホモ欠失を検出し、この領域内に唯一NEGR1が存在することをみいだしたが、NEGR1搬は神経芽腫細胞株NB-19でもホモ欠失が検出されたことからこの遺伝子は癌腫を越えて機能するがん抑制遺伝子である可能性が示唆された。RMSの発症や進展にはこまで報告されていた転座以外にも複数のゲノム異常が関与していることが判明し、悪性度の高い腫瘍の性質に関与している可能性が示唆された。
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