研究概要 |
慢性肉芽腫症(CGD)は、好中球NADPHオキシダーゼ構成蛋白質の遺伝子異常により、活性酸素を生成できないために細菌感染を繰り返す疾患である。このオキシダーゼ蛋白質複合体の中で gp91 だけはX染色体にコードされるので CGD の多数をしめる。遺伝子異常の多くはNon-sense mutationによる中途ストップである。この中途ストップが存在する遺伝子から転写翻訳される異常蛋白質の発現を防ぐ生体防御機構の1つに mRNA レベルでのNonsense-mediated Altered Splicihg(NAS)が存在する。NASにより中途ストップが生じた変異を含む exon は取り除かれ、それから翻訳された蛋白質は完全長ではないものの、機能がある程度保持される可能性があり、実際NAS による筋ジストロフィーの軽症型が報告されている。私共はCGDの疾患原因を研究し、平成19年度、初めてCGD におけるNASを発見した。また、その詳しい解析を行った結果、以下のような成果を得た。 (1)gp91のexon5に中途ストップが存在する変異を持つCGD患者のgp91には、NASの機構により、exon5を丸ごとスキップした mRNAが存在した。 (2)ところが、このexon5をスキップしても、exon6でまた中途ストップが生じることから、exon5と6を丸ごと、そして同様の理由からexon5,6,7を全て欠損したgp91のmRNAを同定した。 (3)また、exon3に中途ストップが存在するCGD例では、免疫染色の結果から微量ながらgp91を発現し、化学発光法による測定結果から活性酸素生成能も保持していた。抗体の認識部位が exon5以降であるので、exon3をスキップした mRNA からの翻訳蛋白質が発現し活性酸素を生成していることが示唆された。
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