札幌医科大学小児科学教室で1980年以降20数年間にわたって保存しているRSV下気道炎に罹患した乳幼児の臨床レコードを掘り起こし、RSV細気管支炎、RSV肺炎など下気道炎のリスクファクターとして明らかになっている事柄について検討した。つまり、早産未熟児であったか、先天性心疾患を有していたか、あるいは新生児期に呼吸障害を呈し慢性肺疾患をなどである。それら、明らかなリスクファクターを有している乳幼児を除いた児を対象としてピックアップした。症例数としては当初100名前後を想定していたが、臨床レコードが不備な者もあるため、最終的には50例前後となった。対照群としてはRSV感染で受診歴の無い幼児、つまりRSV感染が軽症に経過したと考えられる幼児50名を当てることを考え、現在、対象を選ぶ作業を進めている。 次に、対象としてピックアップされた乳幼児より分離・保存されたRSV、あるいは気道分泌液から抽出されたRNAから、PCRによりRSVのエンベロープ蛋白の一つで変異に富むG蛋白遺伝子を検出し、PCR産物のダイレクトシークエンス法より、RSVの遺伝子型(グループA、A1〜A7;グループB、B1〜B4)の決定を進めている。これには当教室のSekiら、Kuroiwaらの方法を用いているが、現在までの所、特定のRSV遺伝子型への偏りについては明らかでない。次年度も、解析を進め、本邦乳幼児のRSV下気道炎の重症化に関与するウイルス側の遺伝的背景について検討する。更に、RSV感染症の重症化に関係するホストの遺伝子変異について解析を進める。
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