RNAウイルス感染細胞において、ウイルスゲノム複製時に2本鎖RNAが形成される。この2本鎖RNAを認識する細胞内受容体の幾つかは、細胞内シグナル伝達を介して、I型インターフェロン(IFN)の産生を誘導し、感染細胞が抗ウイルス作用を現すと考えられている。本研究では、呼吸器感染症の病原ウイルスであるRSV感染培養細胞に、合成2本鎖RNA(poly(I:C))を作用させて、poly(I:C)の抗RSV作用、並びにそのメカニズムを解明することを目的とした。 24ウェルプレートに培養したHeLa細胞に、RSV Long株をMOI=0.5で感染させ、poly(I:C)(20μg/ml)を感染24時間前、感染直後、及び感染24時間後に培養液中に添加し、その24〜48時間後に培養液中からウイルスRNAを、また感染細胞からトータルRNAを抽出した。Real-time RT-PCRにて培養液中のRSVコピー数を定量した。結果は、いずれのpoly(I:C)刺激によっても、培養液中のRSVコピー数は非刺激感染細胞よりも有意に減少していた。次にpoly(I:C)刺激によるRSV産生抑制に対するIFN-βの関与を検討した。上記の感染細胞におけるIFN-βmRNA発現をreal-time RT-PCRで定量した結果、poly(I:C)刺激RSV感染細胞では非刺激細胞に比べIFN-βmRNA発現が有意に低下していた。しかし同じ実験系において、poly(I:C)刺激RSV感染細胞でのIFN-βmRNA発現は、RSV非感染コントロール細胞での発現の10倍以上増強していることから、上記のpoly(I:C)刺激の有無によるIFN-βmRNA発現の差は、培養上清中のRSV量の差が影響したものと推測された。
|