研究概要 |
平成19年度に構築した胎児期化学物質曝露システムを用い、胎児期曝露マウスを作成、アレルギー反応の解析を分化誘導した肥満細胞を中心に検討した。化学物質としてアレルギー疾患との関与が示唆されているホルムアルデヒドを用いた。(1)胎児期化学物質曝露モデルの作成:マウスを交配させ妊娠(プラーク)確認後、化学物質の全身曝露を出産直前までの14日間行う。ホルムアルデヒドは室内環境濃度の許容濃度(80ppb)で曝露を行った。曝露による出生率や、仔マウスの体重増加に影響はなかった。(2)シグナル伝達物質の活性化の解析:(1)の胎児期曝露マウスと対照群マウスを用いて、STAT5の活性化を解析した。胎児期曝露マウスの胸腺細胞においてSTAT5の活性化が認められた。(3)肥満細胞の解析:(1)の胎児期曝露マウスと対照群マウスの骨髄細胞から肥満細胞を分化誘導し、FcεRIを介した抗原刺激による脱顆粒反応、サイトカイン・PGD2の産生量を比較検討し肥満細胞によるアレルギー応答を解析した。骨髄細胞中のCD34+細胞が曝露群で顕著に増加していた。肥満細胞ではアレルギー性炎症/Th2応答を亢進させるPGD2, histamine,IL-6, IL-13の産生増加を認めた。その結果、胎児期曝露を受けた個体は胸腺、骨髄において、それぞれ、STAT5の活性化の亢進、CD34+細胞の増加を認めた。この活性化は(1)幼児期になってもその影響が持続し、その影響は(2)より未熟な細胞に顕著で、(3)分化誘導した肥満細胞でも観察された。STAT5の活性化は、Th1細胞の分化を抑制することによりTh1/Th2バランスをTh2に偏向させること、CD34+細胞はアレルギー性炎症の重要なエフェクター細胞となることが報告されていることと併せ、胎児期における化学物質の曝露は個体allergy-sensitiveな方向性をもたらすことが示唆された。
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