昨年度の結果から依存性受容体UNC5H4は神経芽腫の予後良好群で発現が有意に高く、その高発現と良好な予後との相関が認められた。さらに、UNC5H4はがん抑制遺伝子p53と関連し、アポトーシス誘導能を持つことが判った。つまり、UNC5H4は神経芽腫の細胞死において重要な役割を果たすことが示唆された。今年度はこれまでの研究結果を踏まえ、神経芽腫の細胞死における依存性受容体UNC5H4の機能をさらに検討することを目的とした。 神経芽腫細胞株SH-SY5YおよびSK-N-BEにUNC5H4を過剰発現させ、アポトーシス誘導能を検討するためTUNNELアッセイ法を行った。その結果、ベクターをトランスフェクトしたコントロール群に比べ、UNC5H4を過剰発現させた群ではTUNNEL染色陽性細胞が著しく上昇していることが判った。すなわち、UNC5H4の過剰発現が神経芽腫細胞にアポトーシス誘導を引き起こしたことが示唆された。さらに、UNC5H4を過剰発現させたSK-N-BEを用いて、細胞増殖能を検討したところ、UNC5H4過剰発現群では細胞の増殖が抑制されていることが明らかになった。また、SH-SY5Y細胞にUNC5H4を過剰発現させるとカスペース3が活性化されUNC5H4の切断断片が検出された。 UNC5H4はリガンド依存性受容体であることから、手術によって摘出された神経芽腫から調整した細胞を用いて以下のアッセイを行った。調整した細胞にUNC5ファミリーのリガンドであるnetrin-1を添加した条件のもと、神経成長因子NGFを加えた後、NGFを除去することによってアポトーシス誘導能を検討した。その結果、でnetrin-1未添加に比べ、netrin-1添加条件下では、アポトーシスの誘導が減少していることが判った。従って、UNC5H4の細胞死誘導はnetrin-1により制御される可能性が示唆された。
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