本研究は小児腫瘍特に神経芽腫の新たな治療法開発に向けて、ポリコーム複合体蛋白Bmi1をターゲット分子とし、エピゲノミック変異の影響をダイナミックに解析する系を確立することを目的とするものである。ポリコーム遺伝子産物のなかでも発がん過程に深く関与することが知られているBmi1とがん抑制遺伝子ARFおよびp16INK4aの発現解析の相関を検討したところ、両者の間には強い相関は見られなかった。しかしMYCN増幅神経芽腫株では、Bmi1のmRNAおよび蛋白質の発現が高いことを見出した。また、Bmi1のプロモーター部分をゲノムから増幅し、このゲノムフラグメントにプロモーター活性があることをルシフェラーゼアッセイで確認した。このゲノムフラグメントにはMYCN結合配列(E-box)が存在しており、この部分へのMYCNの直接結合の確認を次年度にChIPアッセイにて行う。 SH-SY5YとTet21/N(MYCN誘導株)にてのBmi1強制発現によって、Bmi1が神経芽腫細胞の増殖を促進できることを見出した。この際にもp16/ARFの発現変化は見られず、神経芽腫ではp16/ARF以外のエフェクターの存在が示唆された。Bmi1ノックダウン系では強制発現系と相反するデータが取得されると期待され、次年度はこの実験をレンチウイルスを用いたshRNAにて行ってフェノタイプを確認する。
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