研究概要 |
本研究は、メソトレキセート(MTX)、6-MP、Ara-Cといった抗癌剤がDNA複製を障害する分子メカニズムを明らかにし、この過程を修飾する諸因子を明らかにすることで、これら因子群を薬剤感受性バイオマーカーとして開発することを目的としている。平成20年度は、(1)Ara-C,6-MPなどの塩基アナログの効果を検証するためのgap-fillingアッセイ系を確立すること、(2)メソトキセート(MTX)、5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤が、DNA合成においてDNAポリメラーゼがヌクレオチドを取り込む反応を阻害する具体的な分子メカニズムを明らかにするために、ヌクレオチド・プール不均衡がどのようにDNA複製を修飾するのか、5-FUによりもたらされるヌクレオチド・プール不均衡をモデルとして基礎的検討を行うことを計画した。これらの目的にはまず、(1)プライマー伸長反応や2本鎖環状DNA(プラスミド)基質を用いたgap-filling反応により、in vivoのDNA複製を再現する系を構築することがもとめられる。現在、M13mp18を用いたgap-fillingアッセイ系がほぼ確立され、細胞粗抽出液を用いて、DNA複製の基本的なカイネティックを明らかにしつつある。この系において、今後上述した薬剤のDNA複製に対する効果を詳細に観察する。(2)一方、5-FUによりもたらされるヌクレオチド・プール不均衡は、チミジル酸合成酵素遺伝子発現の多寡によって修飾される。チミジル酸合成酵素遺伝子発現レベルを薬剤によって調節可能な細胞株が樹立されたため、この系を用いて、今後ヌクレオチド・プール不均衡がどのようにDNA複製を修飾するのか、詳細な観察を行う。
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