研究概要 |
我々は,過去の研究において、羊水腔内エンドトキシン投与が、出生したラット新生仔肺に肺胞数の減少をもたらすことを証明した。半径が大きく数が少ない肺胞は,ヒト早産児において生命予後を最も大きく左右する,子宮内炎症に起因するIII型慢性肺疾患と相同であると考えられた。この研究において,肺胞数減少の機序として想定された「肺胞新生の抑制」の存在を証明することが,本研究の主な目的である。初年度である本年度は,過去の実験の再現性の確認と,肺胞数,肺胞壁のアポトーシス活性,肺胞新生をそれぞれ定量化する手技の確立を行った。妊娠21日のラット羊水腔内にエンドトキシンあるいは生食を投与し,24時間後に帝王切開で出生させた新生仔を里親保育し,経時的に肺を摘出して検体とした。検体の光学顕微鏡所見から,モルフォメトリー法を用いて,単位容積あたりの肺胞数および肺胞の平均半径の定量化を行った。肺胞壁におけるアポトーシス活性はTunel染色により定量化した。また,DNAの断片化の程度によりアポトーシス活性の定量化を試みた。肺胞新生の指標であるαSMAを免疫染色して定量化した。 また,検体から抽出したRNAを用いて,αSMAの発現を定量化した。これらの実験により,肺胞数,肺胞壁アポトーシス,肺胞新生が定量化できるようになった。次年度は,検体数を蓄積した上で,検体を盲検化して定量を行い,統計学的評価を行う計画である。
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